食堂かたつむり
タイトル:食堂かたつむり
著者:小川糸
ポプラ文庫
恋人と別れ傷ついた女性が、食と人を通して、少しずつ前に進んでいく話。
話を簡素にまとめると、先に読んだ「太陽のパスタ、豆のスープ」と通ずるものがありますね。
中身をあまり確認せずに購入ましたが、よくこの2冊を続けて手にしたものだなあ。
外国人の恋人に家財道具などを一切合財持ち逃げされた主人公・倫子。
地元に帰った彼女は、そこで「食堂かたつむり」を開く。
店で提供されるのは、事前にお客様からのリスニングで考案された特別メニュー。
1日1組限定の風変わりな営業スタイルで、彼女の料理を食べた人は不思議な奇跡が起きて――
ここまでのストーリーで良かったなあ、という思いでいっぱいです。
私的に表題の後ろ1/3は不要で、おかんやネオコンたちの下卑た会話には正直辟易しました。
そこも含めてこの小説の、作者の良さでなないか。
そんなキレイゴトばかりのご都合キラキラファンタジー小説がよければ読まなければいい。
と言われそうですが。
私の周囲に、ここまでドストレートに下品な人間が存在しなかったもので。
料理や店、来店するお客さんの話は楽しく読み進められただけに残念至極。
そのギャップの激しさに、どうも私は馴染めなかったようです。
読み進める上でネタバレにもならないのでついでにお伝えしておくと、夜逃げの如く失踪した外国人の恋人がなぜそのような行動に出たのか。
それについては、後のストーリーでも解決することはありません。
というのも、一人称視点で進行する彼女の物語からは、彼はとっくに退場している人物なわけで。
一人称視点で書かれた話を久しぶりに読んだせいか、初めましてな作家さんだったせいか。
なかなかに慣れるまでに難儀しました。
結果、彼について触れられるのかられないのか、モヤモヤしたまま読み続ける羽目になりました。
冒頭で頭に入ってこない物語は、途中に良いシーンが出てきても、あまり好きになれないものだなあ。
と、再確認できた作品でした。
恐らく私は、彼女の事をあまり好きになれないんだろう。